柔之術 武芯館

- 体のバランスで身を守る護身術 -

重みを預けて、振り子になる

 

基本の動作は、肩の引きによって重心移動と体の軸移動を同時に行っています。そのとき移動する重みの力を打撃や投げ技の原動力にしているのですが、注意するポイントがあります。

 

それは“筋力任せに加速させない”こと。イメージとしては、手に持ったミカン(物)を胸の高さからパッと手を開いて落下させるような感じです。重力に任せて重みを自由落下させる。けっして地面に叩きつけるようにしてミカンを投げ落とすわけではありません。

 

衝突球というおもちゃをご存知でしょうか?いくつかの鉄球が紐につるされて並んでおり、端の1個を斜めに持ち上げて振り子のように落下させると、残り の球にぶつかって反対側の球がはじきだされるというもの。このとき、1個だけ落せば、反対側で1個。2個落せば、反対側も2個と同数(同じ重さ)だけ動く のが特徴です。

 

この衝突球の球を自然に落下させるのではなく、投げつけるようにして他の球に当てても反対側の球がうまくはじかれません。ぐしゃぐしゃっと汚く乱れる。

 

基本の動作で重みの力を利用するときも、この衝突球と同じ感覚です。地面に叩きつけてミカンをぐしゃっと潰さないことがポイント。“衝突球が うまく弾かれない“ミカンが潰れる”というのは、力が相手に伝わりきらずに自分の中に残っているということ。つまり、重みの威力をしっかり伝えきるために は、自分の重みを振り子のように扱う。それが稽古でお話しています“揺れる”イメージです。気分的には、重みを自分の力で制御しようとせず、重力に預けて しまう心持でしょうか。